電気自動車はバッテリーの冷却が重要!冷却方法の"空冷"と"水冷"について解説

更新 2021.11.05 バッテリーの維持管理
目次

電気自動車もガソリン車と同じように各部に冷却装置がついています。特にバッテリーは熱に弱いため、冷却装置は重要なパーツです。ところで、バッテリーの冷却方法はどのようなものがあるのでしょうか。この記事では、バッテリー冷却方法の種類とそれぞれの特徴を解説します。


 


なぜ電気自動車のバッテリーの冷却が重要なのか?


 



 


電気自動車は、大容量の高出力バッテリーを搭載し、モーターを駆動して動きます。モーターは、バッテリーから電気を送られてタイヤを動かす大切なパーツです。しかし、電気自動車は、モーター以上にバッテリーの性能の方が重要となります。容量が大きく高出力のバッテリーを搭載すれば、航続距離が長くなり、多くのパワーを得られるものの、バッテリーの発熱が課題です。バッテリーが発熱するとどのようなことが起きるのか身近な電子機器に例えて解説します。


 


電気自動車を身近な電化製品に例えるとスマートフォンです。スマートフォンに使われているバッテリーは、電気自動車にも使われるリチウムイオンバッテリー。スマートフォンでウェブサイトや動画を見続けたり、長時間ゲームをしたりすると、バッテリー残量が減り、時にはバッテリーが発熱しているという経験をしたことがあるのではないでしょうか。また、充電ケーブルを接続した状態でスマートフォンの操作をするとバッテリーが暖かくなっているとことがあるかと思います。


 


スマートフォンの場合、本体に触れられないほどバッテリーが発熱することはほぼありませんが、バッテリーが熱を持つと動作が遅くなったり、フリーズしたり、端末保護のために電源が落ちてしまうことがあります。


 


これを電気自動車に置き換えると、モーターや電装品による放電と回生ブレーキによる充電を常に繰り返している状態。つまり、充電ケーブルを接続したスマートフォンと同じ状態になるのです。放電と充電を常に繰り返しているということは、スマートフォンと同じようにバッテリーが発熱します。そして、電気自動車のバッテリーが発熱し続けると、バッテリー性能の低下や劣化が進行。さらに、バッテリー保護のため充電速度が低下します。そのため、電気自動車のバッテリーを冷却し、発熱を抑制することが重要なのです。


 


バッテリー冷却方法の違い


 


電気自動車のバッテリーの冷却方法は、「空冷」と「水冷」の2種類です。それぞれどのような特徴があるのか解説します。


 


空冷によるバッテリー冷却方法


 


空冷によるバッテリー冷却は、走行中の空気の流れやファンによってバッテリーを冷却します。電気を溜めておくバッテリー付近に液体がないため感電する心配がありません。また、冷却水のホースを通す必要がなく、バッテリー周りの構造を簡素化できます。


 


しかし、バッテリーの冷却が十分にできません。バッテリーを最適温度に下げることが難しく、急速充電をした際に発生する発熱に冷却が追い付かないケースが多いです。よって、少しずつ普及している150kWなどの超急速充電に対応するのが難しいといえるでしょう。


 


水冷によるバッテリー冷却方法


 


水冷によるバッテリー冷却は、バッテリーのセルの周辺に冷却ホースを張り巡らせ、ホースの中に冷却水を通してバッテリーを冷却します。走行中のみならず、停車中にも冷却ができ、超急速充電による発熱にも対応が可能です。さらに、適正な温度管理ができるシステムを搭載していれば、電気自動車の優れた性能を発揮できるだけでなく、バッテリーの劣化を抑えることもできます。しかし、バッテリーの周辺の構造が複雑になり、定期的に冷却水の点検などが必要です。


 


どちらの冷却方法が良いのか?


 


"空冷"と"水冷"の冷却方法には、それぞれにメリットやデメリットがありますが、バッテリー性能の維持や超急速充電器への対応を考えれば「水冷」の方が良いといえるでしょう。


 


内燃機関(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン)の車の冷却が、性能向上と共に空冷から水冷に変化したように、電気自動車もバッテリーの性能・容量や充電インフラの進化に合わせて、水冷による冷却システムを採用した方が効率が良いのです。


 


バッテリーが傷むと売るときの評価が下がるのか?


 


電気自動車のバッテリーは、航続距離や出力に影響を及ぼす重要なパーツです。そのため、バッテリー性能が低下・劣化すると売るときの評価も厳しくなります。一般的に「セル欠」と呼ばれるバッテリー性能の低下があると、買取評価が下がることがほとんどです。電気自動車を少しでも高く売りたいのであれば、バッテリーの温度管理や冷却に気をつかい、セル欠にならないようにしておきましょう。


 


まとめ


 


電気自動車のバッテリー冷却は、電気自動車の走行性能や充電性能、そして、売却するときのリセールバリューにまで影響します。空冷によるバッテリー冷却なのか、水冷によるバッテリー冷却なのかというのは、車種によってバラバラです。電気自動車を購入するときは、内装や外装、価格や航続距離などだけでなく、バッテリーの冷却方法にも注目して選ぶことをおすすめします。


 

[電気王編集部]